母子生活支援施設ベタニヤホーム

母子生活支援施設だからこそできる
食支援

2024年3月31日
 

母子生活支援施設が食支援をはじめたきっかけ

 2016年から認特)セカンドハーベスト・ジャパン様との連携をはじめており、施設利用者への食品配布支援を行ってきました。初めは施設利用者に配布し、次に施設退所者と食品配布の対象者を広げていきましたが、今のように地域向けのフードパントリーを行うには食材が足りませんでした。また、施設の建て替えに伴い、さらに食品配布を深化させる計画を立案していました。母子生活支援施設というシェルター機能を有する施設におけるパントリーをどうやって展開するかを模索していました。しかしながら、コロナ禍により食支援が予定通りには行えず、当時は全てが分からず、食品確保や配布方法等、 0から考えての試行錯誤で進めていました。そんな中、一社)全国食支援活動協力会の休眠預金事業に採択されたことが契機となり、退所者、地域母子世帯への食支援のロードマップを立てることができました。
 今ではフードパントリーを開催すると同時にソシオエステティシャンの方へ来ていただいたり、企業からいただいた洋服もフードパントリー開催時に提供、さらに簡易託児所もパントリー内に設置してあり、お母さんたちの憩いの場になっています。
「「こんなにゆっくり子どものことを気にせず洋服を選んだのなんて何年ぶりだろう。」「ここのフードパントリー
はなんかあったかいよね。」と声をいただいています。やっぱりここに来るとゆっくりできる感覚があるんだろうと思います。食だけではベクトルが1つになってしまって利用者さんも居づらいんだと思います。だから、インタラクティブであることは重要なんだと思います。」(伊丹さん)
ネットでのPRではなく区内食支援ネットワークの形成により、口コミを重視することで、量を取らず質を取る食支援になっていきました。
 

食支援を通じて施設の入居につなげる

 ただ、食支援は目的ではなくあくまでもツールだと伊丹さんは言います。「パントリーをやることによって、食品にも困っている人は何か他にも困っているのではないか。そういう母子家庭を見つけて、入居までつなげる。それが目的です。」そのためにパントリーにおける相談体制を重視し、心理職を配置しているのも母子生活支援施設ならでは。
 伊丹さんは職員のみなさんに、あくまで職員は食べ物を配る人ではなく、お話しをする人であり、タブーを支援者側が作ってはいけないと伝えているそう。「その人に対し“聞いちゃいけない”と思った時点で相手にとっての本質的な支援にはつながらなくなる。たとえば、性の問題と経済の問題は、聞きづらくても聞かないと適切な支援ができないんです。(伊丹さん)」元々母子生活支援施設の職員さんは間の取り方、距離の取り方が得意だと言います。利用者との関係性をはぐくむなかで、食は対等なコミュニケーションを生む抜群のツールだと伊丹さんは言います。「その中でも特に米とか野菜とか肉とかは話しやすいです。お子さんが大きければ「食べるでしょう?どのくらい食べます?」とか「これでどんなもの作ります?」とか。食を話題にすることで“困っている”ことを直接的には聞かない、支援する側される側の関係には決してならないので。(伊丹さん)」
 

食支援ネットワークの形成

 食品ロス対策のため墨田区議会の特別委員会に伊丹さんが呼ばれ、そこで倉庫を貸してほしい、定期便と一緒に食品も回してほしいと提案。議会と行政が協力的だったこともあり、そこから具体的な検討を始めて生まれたのが、ストックヤードを拠点とした食ロス対策、及び食支援の活動「食支援包括ネットワークごっつぁんすみだ」です。食品の一括管理、収集、仕分け、保管、配送を役割分担して行うスキーム作りに成功しました。食品の仕分けや管理、配送に関しては、障がい者の方が行ってくれています。ストックヤードには冷蔵庫、冷凍庫が完備されており、企業はこのストックヤードに一括寄付するだけで、多くのこども食堂等に食品が行き渡ります。
 ネットワークでの関係性において、大切にしていることがあると伊丹さんは言います。「顔が見える関係でいることは大切にしています。寄付した食品を簡単に捨ててほしくない。それは本末転倒ですから。(伊丹)」
対面で話をしていくうちに他団体との信頼関係が築け、伊丹さんに相談をされる団体さんもいます。

 

フードパントリーで見えてきた課題、今後の展望

 入居者向け、退所者、地域向けのフードパントリーと拡大をしてきたことによって、本当に困窮している家庭が見えてきたと伊丹さんは言います。「その場で飢えてる子どもたちがいる、お母さんたちがいる家庭がある。孤食対策っていうレベルじゃないものまで見えてきちゃった。そこに我々が 関わることで食だけではない包括的な支援を形成していくことこそ、社会福祉法人の存在意義だと思うのです。(伊丹さん)」
 また、ゆくゆくは利用者の方が支援者になってもらいたいと伊丹さんは言います。「支援の受け手でいつづける限り、自己肯定感は決して高まらない。だから野菜切れるとか、カレー溶かせるとか、 11個でもいいから何かやってくれればいいと思って、この前パントリーカフェを開きました。(伊丹さん)」 今では施設内フードドライブを行うまでになりました。赤ちゃんがいる家では食べないようなもの、そういうものをそのままにしておけばいずれ廃棄することになってしまいます。支援の受け手が担い手に変わることで、このフードドライブが食品ロス対策につながるということを知ってほしいと伊丹さんは言います。
 
 
 
 
 

◎主な事業内容
・フードパントリー
・居宅への宅食
 
◎活用している資金源 
フードバンクTAMA食品寄贈
SMBCグループライジング基金
墨田区食支援団体利用環境整備緊急補助金
 
◎URL