女性を元気にする会

女性を笑顔にするため隠れたSOSを引き出しつながる

2024.03.31
 

活動のきっかけと活動体制

前職取締役に就任後、「女性中心の女性に優しい会社」への改革にとりくまれたゴージャスさん。退職後、たくさんの女性を笑顔にしたいとエステサロンを2008年に起業しました。しかし支援が必要な女性ほど来店しないため、仕掛ける側になろうと2015年に「女性を元気にする会」を立ち上げます。
かつてご自身も過去に辛いご経験をされ、“当時こんな支援があったらよかった”と思うことを今の活動に繋げています。活動の中で冬に着る服がないという相談から貧困・困窮世帯のより厳しい現状を知り、ライフラインが止まっている家庭や孤立家庭とつながったことがきっかけで食糧支援を始めました。 
「食べ物は毎日のことだから、お金はあげられないから食料ならということで始めました。食料を持っていけば相手が心を開いてくれるので。」(ゴージャスさん)活動を始めた当初から那覇市に絞り込むのではなく「車で行けるところまで行こう。」と決めていました。
「女性を元気にする会」はゴージャス理枝さんとまつ毛美紀さんの二人体制。個性的な名前で活動するのは「いざと言うときに思い出してもらえるように」と考えてのこと。ヒアリングからアポイントメント、食材の管理・調達、行政とのやりとりや寄付の受付等の事務的なことなどすべてお二人で行っています。宅配のアポイントメントはまつ毛さんが2,3日前あるいは1日前に行っています。
調達は1週間に2~3時間、安くなる日に食料品だけでなく消耗品も買い出しに行きます。配達は1週間に15時間、火曜日と水曜日の週2回。これらの活動だけで月に100時間程度活動しています。
 

企業と行政、多団体とのネットワークの連携

繋ぐ先は企業、生活保護課、子ども未来課、パーソナルサポート、市社協の担当者、多団体など様々です。社会福祉協議会を通じてCSW(コミュニティソーシャルワーカー)を紹介していただいたり、支援は那覇市だけではなく、うるま市や沖縄市など全県に渡るため、繋ぐ先も幅広いです。各々の連携についてご紹介していきます。まず企業との連携は A&Wとファミリーマートです。

A&Wは本社経由で全店舗の女子トイレにチラシを貼付してくださいました。ファミリーマートは2022年1月から1か月間同じく女子トイレ貼らせていただいたそうですが、いまだに置いている店舗もありました。このような企業との連携のおかげで、ゴージャスさんたちの活動が広く知れ渡り、今では多くの方が「チラシを見て連絡した」と答えるほどです。
何かあった時に連絡しようと思ってチラシのQRコードだけ撮っていたという方、携帯の充電も切れてしまったお母さんがトイレに行って充電をしながら連絡をしてくれたケースもありました。
 
次に行政との連携です。次から次へと新しい支援希望の相談が来るため、継続支援を行う場合は1か月に1回、早くても2 ,3週間に1回程度が限界です。その期間中心配な人は行政に繋ぐようにしています。繋ぐかどうか迷ったらすぐ繋ぐとゴージャスさんは言います。そのノウハウは今までの実践で積んできました。それでも繋ぎ先が分からない場合、まずは那覇市社会福祉協議会の浦崎さんに相談されるそうです。浦崎さんはゴージャスさんが初めてアクセスする行政や関係機関との顔合わせで同席いただくなど、関係性構築でも力を貸してもらったといいます。いまは同席いただくことはないそうですが、関係性を維持し適切な支援を行うため、定期的に関係機関との協議の場を持たれています。
最後に他団体とのネットワークをご紹介します。緊急の支援を要する方には生活困窮世帯にベビーミルクを支援する「共育ステーションつむぎ」や「宜野湾子どもゲンキ食堂」といった他の団体に支援をお願いすることがあります。そのほかに、アパートを探したいといった住まいのニーズは母子会を経由し、ひとり親家庭の自立と子どもの健やかな成長を支援しているゆいハートを紹介しています。
ゴージャスさん達が大切にしていることは、とにかくまずは会うこと。児童相談所に繋ぐケースに出会った際も「周りが絶対児相(児童相談所)だと言っても、まずは会って話を聞いてから決めます。」と仰っていたことが印象的でした。ヒアリングを通して専門機関に繋ぐ必要があると判断した人でも、自分の足で行くことができない人や行かない人の場合には、その場で電話をかけて繋ぎます。
ゴージャスさんは繋ぎ先に対し、基本的な情報は伝えますが詳細まで伝えません。また、繋いだ後も行政から報告をもらうことで“機関に繋ぐというよりはちゃんと人に繋ぐ”ことを徹底しています。
人に繋ぐことで、様々な方がさらに人を紹介してくださり、その都度専門家のアドバイスを得ることで、ゴージャスさん自身も支援の引き出しを増やしています。
「うちは任意団体だからお母さんたちも SOSを出しやすいし、それをメリットとしてキャッチして聞き出せる情報があります。でも事務手続きなどは行政にしかできないですし、そうやって役割分担できたらもっとうまく今後もやっていけるんじゃないかと思っています。」(ゴージャスさん)
 

継続的な支援をおこなうための工夫

支援対象者は「女性」。女性であればひとり親、障がい者、年齢を問わず支援します。 LINEやメールにて連絡がきたらまずは個人情報の登録をしていただきます。

~実際に登録していただく内容~
■確認事項
名前、住所、電話番号、家族構成(年齢)、ご自宅にいる時間帯
女性を元気にする会をどこで知ったか
■優先度
①緊急(明日の食料も無く、経済的にも厳しい)
②2週間程は大丈夫だが、それ以降が厳しい状況
③1ヵ月はどうにか過ごせそうだが、それ以降が厳しくなりそう
④余裕はないが、食料をもらえるなら頂きたい
⑤特に問題はないが、食料をもらえるなら頂きたい
 
「1週間も持たないという緊急を要している方には早急に行くようにしますねとご案内しています。
もし、①だったら今週のうち2~3日で行こうと決めています。」(ゴージャスさん)
①~⑤のうち「④緊急ではないけど、余裕はない」方が一番多く、緊急度が高い人を優先するため、なかには 1か月以上待たせてしまうこともあるといいます。現在の待ち世帯数は100人。コロナ禍など多い時は 180人の待ち人数がいたそうです。②の場合は1か月以内に行くようにしています。
連絡ツールとして使う LINEでは、名前を「配達日、 =シングルマザー、 ~④、名前、住んでいる地域」に分けて対応しています。こうすることで、①の連絡が入った際に周辺エリアに住む優先度の低い方たちにも配達に行けるように工夫されています。
「④の人でも実際行ってみたら②だったということもあります。『自分よりもっと苦しい人たちがいると思って言えなかった』と会った際に話されました。逆に①じゃなかったという人もいます。お母さんたちとちゃんと会って話をしないと分からないこともすごくあって、だから早め早めに行くようにしています。」(ゴージャスさん)
継続して活動をおこなっていくためには「無理のない程度にしないとダメ」だとゴージャスさんは言います。そのためにメール・ LINEでの受付を徹底しており、電話での受付は一切行わないこと、 LINE23時以降から朝までは通知をオフにしていることなど工夫されています。
丁寧に返信をし、いま何世帯待ちであるかを明記したうえで「必ず行くからね」と伝えます。まずはつながれたことへの安心感を与えることで、今まで待たせたことに対する苦情はないといいます。
 
~実際のヒアリング~
ヒアリングには社協からもらったアセスメントシートを活用しています。面談時間は④なら5~ 10分。厳しい世帯での深刻化が増しており、①②のような場合は 30分~ 1時間程度かけています。
「継続して支援が必要そうな世帯は1週間に 15世帯中 1世帯程度です。そういう世帯にはこちらから声をかけてモニタリングします。多めにいただいた食品や、(吉野家の牛丼など)イレギュラーでいただいたものを持参しています。」(ゴージャスさん)
見守りが継続して必要な対象者の例としては来月も収入がない人、行政に行かれない人、つながっている先はあるが精神的につながりが必要な人などです。
 

支援者とのコミュニケーション

「1回勝負なんです。そこで彼女たちにどれだけ話させるか。会ってよかったと思わせないといけない。とにかく聞く。彼女たちが話せるところまでもっていく。一発勝負。めちゃくちゃ大事。本気なんで。」と強く話すゴージャスさん。そのヒアリングは本当に何でも話してしまうような、初対面だけどどこか友達のような明るさがあり、相手の心を開いていきます。
ゴージャスさんがヒアリングで大切にしていることは、「否定をしないこと・励ます言葉を伝えること」です。実際にヒアリングに同行させていただいた際も、「頑張っているよ。正しい選択をしているよ。」と、否定しない・正解を決めつけないで話に耳を傾けていました。初めは警戒心があった方もだんだんと心の扉を開いてくれるようになり、最終的には踏み入った深い話をしてくれました。
なかには沖縄の土地柄もあり「車を処分したくないから生活保護には入れないけど生活はギリギリで困っている」というような、行政の仕組みでは届かないような方もいます。そういう方には「1年だけでもいいから保護に入るべきだよ。頼るしかない。お金はあったほうがいいよ。」とゴージャスさんは伝えています。その上で「やるかやらないかは彼女たちの問題」と最終的な決定権は本人にゆだねています。そのような制度の狭間にある方はパーソナルサポートセンターへ繋げ、生計の立て直しのアポイントメントを取っています。
 

今後の活動と課題

民間の活動団体が個別支援に取り組むことについて、ゴージャスさんは「今一番できることをすべてやっていて、うちみたいなことを他の団体にやってほしいということはあんまり思っていないです。そこまでお願いしてしまったら、みんな負担かなと思います。課題としてはあるけれど、引き出すことができるのはうちの取り柄だし、それをみんなに願いするのはストレスになってしまう。みんなができることをやればいいんですよ。」と言います。「人の話、しかも悪いことばかり聞くので、最初行った人は疲れると言われることもあります。毎日負の話を聞くのがどれだけ大変かわかるので、誰にでもできると思っていないです。」(ゴージャスさん)
一番大変だった時期に比べ、救い上げてきた数だけ必要とされている人は減少したとゴージャスさんは言います。しかし一方でまだ課題が残ります。「孤立や情報が行き届いていない家庭、私たちの存在を知らないのに支援を必要としているお母さんたちがまだ隠れています。どうやってそこに繋がるかというのを考えています。うるま市の端の地域には(まだあまり繋がれていないため、)チラシを撒きに行こうかなと考えています。」(ゴージャスさん)
隠れているお母さんたちに繋がれるよう、県の委託を受けてトータルビュ
ーティーフェアの開催をうるま市を含めた県内4か所で予定しています。トータルビューティーフェアは入場料も相談料も無料で楽しいイベントが設けられています。各市の担当課に相談ブースを出展してもらう予定ということで、そこでお母さんたちをどれだけ呼び込めるかが重要だとゴージャスさんは言います。ゴージャスさんが目の奥を燃やし「本気ですよ。」とおっしゃっていたのがとても印象的でした。
また資金面の課題について、「子ども未来政策課から配達費用は出してくれますが、食費は寄付が中心になっています。今月( 2022年9月現在)は厚労省の補助事業でまかなえていますが、交通費や食費は実費を切ることはできないので、常に助成金などを探している状況です。今貰っていても来年もらえるかわからない中で、来年も SOSが流れているのかなと思うとそれが心配です。」と話していました。
 
 

2023年度ver.
~昨年との活動の変化についてお伺いいたしました。~

 

◎主な事業内容
食料支援 / トータルビューティーフェア
◎活用している資金源 
沖縄県子ども生活福祉部女性力・平和推進課「令和4年度つながりサポート支援事業」
沖縄県子ども生活福祉部子ども未来政策課「令和4年度子ども未来応援助成事業」
厚生労働省「ひとり親家庭等子どもの食事等支援事業」 等
◎活動拠点 

沖縄県那覇市大道21番地1階
◎URL