一般社団法人こどもキッチンブルービー

できることをできるかぎり
笑顔のための居場所づくり

2024.03.31
 

災害支援から始まった個別支援

南阿蘇に生息する「幸せを運ぶ蜂」と言われる蜜蜂ブルービーになぞらえ、「子どもたちは、地域に家庭に幸せを運んで来てくれる存在である」という想いから2016年2月に「こどもキッチンブルービー」を立ち上げました。活動に大きな影響を与えたのは、2016414日・16日の熊本地震。電気・水道・ガスといったライフラインが壊滅的ダメージを受けただけでなく、人の心や地域の絆にもダメージがありました。厳しい環境で生活してきた方々が、地震を契機にさらに厳しい状況になる姿を見た松枝さんは、こども食堂の活動に加え「一般社団法人シンママ応援団熊本」の活動を応援するようになります。「一般社団法人シンママ応援団熊本」は、生活に不安を抱えるシングルマザーと子どもたちに対し、物資や衣料品の支援等を通じてシングルマザーたちがつながる「場」づくりを行っている団体です。後方支援としてひとり親家庭への取り組みに携わり、大変な思いをしているひとり親家庭が身近な場所に多くいることがわかるようになるにつれ、ブルービーでもひとり親家庭に対する食支援や野外活動などの企画を行うようになりました。
 活動を通して個別に支援が必要な人が見えてくるようになり、早急に食支援をすべき喫緊の課題が身近にあることがわかると、全参加者にひとり親支援を始めることを伝え、希望する人には登録をしていただけるよう呼びかけました。ちょうどコロナ禍で物資の提供が増えはじめ、学校が休校になったり、仕事が無くなったりする人が増えてきたことから、フードパントリーを毎週開催し、情報を発信し続けた結果、口コミだけで登録される方が増えていきました。
登録内容は世帯情報、困っている内容や他団体の支援状況などで、基本情報以外の記載は任意にしています。しかし、細かく書いている人が多く、書いていない人についても会話をしているうちに家庭状況が分かるといいます。また、活用している公的福祉サービス等も把握するようにし、支援の参考にしています。当初30世帯だった登録は、現在では47世帯に広がっています。

 

状況にあわせた活動の変化とぶれない想い

 
現在こどもキッチンブルービーは毎月第1・第3土曜日開催のこども食堂をベースに、フードパントリーや企業とのコラボでの体験活動等、様々な活動に取り組まれています。しかし、最初からこのスタイルで運営していた訳ではありません。以前は子ども達が下校時にいつでもふらっと立ち寄れ、見守りが出来るよう、毎日居場所を開催していました。しかし、財政難から毎日の開催ができなくなり、「いつでも来られる居場所でありたい」「けれども、このままでは活動を継続できない」と悩んだ際、背中を押してくれたのは当時の PTA会長の言葉でした。「完全に閉まってしまうのは残念なことだけど、週末だけでも開けていただけるのはありがたい」と言われたことが後押しになり、平日は働いて運営費を捻出し、子どもたちの笑顔のために少しでも長く続けられる居場所づくりをすることにしたそうです。
こうした状況に応じた柔軟な活動の変化は他でも見られます。その一つが、会食の再開です。コロナ禍で厳しい生活を強いられるひとり親家庭の方の話を聞く機会が増える一方、社会的に活動自粛ムードが漂い、なかなかコミュニケーションを図る場の設定ができませんでした。お弁当の配付でも困っていることに気づくことはありますが、あらためて「こどもキッチンブルービー」として活動する上で何のために・何をすべきなのか、これからどのような方針を基に活動を続けていくのかスタッフと話し合いました。その結果、「コロナ感染の状況に応じて会食にしたり、お弁当にしたりとその都度変化させながら安心して過ごせる居場所づくりをしよう」「居場所のなかでコミュニティ形成を大切にし、コミュニケーションを図りながら各家庭の課題を一緒に考えていきたい」と、「原点に戻る」という結論になりました。
 

各種SNSの活用の工夫

会食を再開するにあたり、世代を超えた人と人のつながりを大切にする場を目指し、全世帯対象の多世代食堂にしています。感染リスクを減らす工夫として予約制を採用し、1日4回、11840分(+清掃10分)で運営をしています。予約状況はHPのカレンダーから確認できるようにし、申込や連絡はすべて公式LINEで行い、ひとり親家庭・困窮世帯と一般向けの予約開始時間をずらすなど、より必要とされる方が参加できるよう工夫しながら運営をされています。
一方で、大勢いる場所が苦手な家庭や、多子世帯や車がない遠方家庭等、お弁当が必要な家庭があることが分かっていたため、お弁当方式の個別対応も行われています。また、個別対応についてはFacebookでもお知らせし、必要な方がアクセスできるよう工夫されています。
 

地元の企業・商店とのつながり

柔軟な活動の変化が見られるのは食堂だけではありません。ミニトマトの収穫時に規格外商品のロスが出るというお話から、母子生活支援施設等にお渡しをする調整をしたり、地域のパン屋さん「ベッカライ グリュック」と協力し、
週に一度定休日前の閉店後に、残ってしまったパンをひとり親世帯にお渡ししたりしています。パンは16時に連絡が来た後、受け渡しが毎週とならないように配慮しながら呼びかけを個別にメールで行い、取りに来てもらっています。
 また、以前は南阿蘇で畑を借り、農作業・収穫体験に取り組んでいましたが、畑まで車で 1時間以上と頻繁に行くことや一部の方しか参加できない状況だったのを受け、拠点でできることを探していこうというスタンスに変更をしました。多くの方に主旨を投げかけイベント募集をしたころ、いろんなご提案をいただくことができ、 20227月には熊本ベルェベル美容専門学校と共同で美容に関するプチ職業体験と会食を実施することができました。
 

困っている子ども達に気づくために必要だと考えること

震災や財政難、コロナ禍等、活動に対する苦労をどう乗り越えたか伺ったところ、「苦労とは思っていないです」と松枝さんはおっしゃります。会食を再開された際、会食開催時にはキッチンとホールにスタッフが分かれて準備を進めていますが、キッチン担当から「子どもの声が聞こえてきたり笑い声があったりと、すごく雰囲気が良かったから会食会がやっぱりいいと思う」という言葉が一番心に響いたといいます。会食に来る参加者の笑顔、子どもたちを見守るスタッフの笑顔、みんなの笑顔と想いを一つにして取り組むことが、みんなの幸せにつながる。食を通じてつながる取り組みは人の心もつなげる取り組みだと改めて感じたそうです。
現在、ブルービーの活動は参加しているひとり親家庭の方々等の紹介により、他の支援を必要とされている方や支援をしたい人にもつながるようになりました。またそれにより、地域で関心を示す人たちが現れはじめ、地域の中に必要な居場所として認知され始めたそうです。
松枝さんは今後の展望についてこう語ってくれました。「平日も居場所を開けたいと思っていますが、運営メンバーのほんとんどは別の仕事を抱えているため、なかなか難しいです。今は出来ることを出来る限り無理なく続けながら、今後の運営を考えていきたいと思っています。そうすれば、いろんな人やいろんな知恵も集まり、新たな展開が生まれると思います」

 
 

2023年度ver.
~昨年との活動の変化についてお伺いいたしました。~

 

 
 
 
◎主な事業内容
子ども・地域食堂/お弁当・フードパントリー/個人、ひとり親家庭支援/野外体験活動
◎活用している資金源
WAM子どもの未来応援基金(令和2年度、3年度)
赤い羽根共同募金(令和4年度)
熊本県子ども食堂活動支援事業(令和4年度)
熊本市子ども子どもの未来応援基金(令和3年度)
その他、民間財団助成等
◎活動拠点
熊本県熊本市南区八幡6丁目6-20 
◎URL
こどもキッチンブルービーホームページ