特定非営利活動法人U.grandma Japan

災害をきっかけにしたネットワークによる見守り・支援

2024.03.31
 

活動の原点

愛媛県宇和島市で活動する U.grandmaJapanの松島さん。この団体を立ち上げたきっかけは、2018年に西日本で起きた豪雨災害でした。当時、浸水被害・停電・断水等の膨大な被害にあった宇和島市。被害にあった場所や日々変化する状況を目のあたりにして「私たちに今何ができるか考え、被害者の立場にたって細かい配慮ができる支援をしていきたいと思いからU.grandma(うわじまグランマ)という団体を立ち上げました。」(松島さん)災害時から炊き出し支援をしていたこ

ともあり、食を通じた支援としてこども食堂の活動が始まりました。災害を受けてコミュニティーの大切さを感じた松島さんは、市の福祉課の職員に子ども食堂を立ち上げ「ネットワークづくりをしたい」と伝え続け、こども食堂のネットワーク形成のため、市と協働で「宇和島市子ども食堂連絡協議会」を立ち上げに尽力しました。「災害支援中ではありましたが、今しかないと思いました。一緒になってできる仕組みを最初からつくらないと、途中からだと難しいと思ったので、宇和島では最初からこども食堂をネットワーク前提として、作り上げました。自分たちだけでいい方向にするのではなく、みんなが底上げされるといいと思ったんです。」(松島さん)
 

困っている人との出会い方とSOSのキャッチ

食の提供だけなく、困っている人たちへの見守り活動を行っているU.grandmaJapan。宇和島市子ども食堂連絡協議会として現在15か所あるこども食堂へは毎月必ず協議会のスタッフが行き、困っている人のキャッチや、こども食堂の相談に乗っています。また、市の福祉課とも連携をし、見守り支援事業も行っております。こども食堂と見守り支援事業、フードパントリーの三つの切り口から、困っている人たちへアクセスしています。見守り支援事業では、つながった引きこもりがちな子どもに対して、グランマのひとり親世帯支援のフードパントリーで有償ボランティアをしていただくことで、自分が社会の役に立って、対価をいただくということを経験してもらいます。ライン登録者は1031世帯で子育て世帯含む
コロナ禍をきっかけに、フードパントリーの活動を開始しました。月に1回、特にひとり親家庭を対象とし220世帯ほどに配布をしています。支援情報はLINEで受け取ることができます。LINE登録時にひとり親世帯、子育て世帯、というような形でカテゴリー分けをします。情報発信の際はカテゴリー別で支援内容を発信します。フードパントリーは、時間を分けたドライブスルー方式。時間を分け配布することで、他人と重なるのを防ぎ、受け取り側も、他の人の目を気にすることなく、取りに行くことができます。渡す際には、その場で声掛けも行っています。申し込みはPeatixを活用し、必須入力の項目として、今の問題や困りごとなどの悩みも書くことができます。
「悩みを書いた人たちには、次の支援の相談日への案内や、自立できていないと見受けられた場合は福祉課へ報告しています。対面だと言いづらくても、入力するかたちであれば、伝えやすいと思います。」(松島さん)
ここでは、受け取りに来た人の「困った」が伝えやすい工夫がされており、支援が必要な人のキャッチから次の支援へつなぐフローの取り組みが行われています。コロナ禍以降に広まったフードパントリーは、食糧配布だけにとどまらず、支援を必要としている人の入口となり、困窮者を支援するまで活動の幅が広がりつつあります。
 

地域/学校/行政とのつながりが、活動の課題解決に

U.grandmaJapanは地域とのつながりも厚いです。ボランティア活動では多くの時間を共に共有するため、より信頼関係が強くなり、「免許が取りたいけど30万円用意するのが難しい。」と打ち明けてくれました。その様子をみていた地域住民の方々は、住職さんはお寺のお掃除のお手伝いを頼んでくれたり、お花屋さんも仕事を用意してくださり、地域住民の皆さんで少しでもお金が集まるように仕事をつくってくださいました。
各地のこども食堂が活動をしていくにあたり、課題として挙がっていたのが「自分たちだけで活動を配信するのが大変」ということだったそう。松島さんは前年度に宇和島市全体のPTA会長をやっていたこともあり、教育委員会へも働きかけ、中学校・高校の生徒へのチラシの配布に協力依頼をだしました。学校で配布してもらうことで、広範囲で直接こどもたちへ活動の周知をすることができます。最近では、こども達がもっている市のタブレットでこども食堂の開催日をお知らせする取り組みを始めました。他にも、市の福祉課へ企画のお知らせを渡しておくと周知してくれるなど、市との協力関係ができています。また、宇和島市のアプリ「伊達なうわじま安心ナビ」の子育てモード内で子ども食堂開催日程情報を掲載しています。
現在は、要体協に子ども食堂連絡協議会の会長が入っていたり、2か月に1回開催される「宇和島市子ども食堂連絡協議会」の共有会議では、市社協も入っていたりなど、行政との対話する機会もあります。「つながり力が必要だと思います。個人情報の問題もあり、情報の連携ができない所もあるが、今後は行政とうまく連携できる仕組みをもっと進めていきたいと思っています。」(松島さん)食支援から困窮者の支援へと活動が広がっているからこそ、行政や教育機関と重層的な連携を行うことで、支援の輪を広げ、受益者を取りこぼさない取り組みが行われています。
 

今後の活動について

現在、健康福祉課・管理栄養士・保健福祉士と、子どもたちへの食育活動に取り組み始めました。
「長生きができながらこども達
に食育という視点から、地域づくりができたら良いなと思っています。食支援に+オンで、食育や寄付の食材を活用したメニュー作りをしていきたいです。一団体ではできないので複数団体と協力しながら、目指しています。」(松島さん)今後の課題としては「活動を続けること」と「お手伝いの継続確保」があるそうです。「高齢者の人たちは、食べにくるといつも、何か自分たちにできることがないか聞いてきてくれます。ひとり親の方々も私たちが汗水垂らして働いていると、私たちも何か手伝いましょうかと聞いてきてくれるんです。今は受益者であるけれども、今後は支援する側へとまわれるように、来てくれる人は手伝える仕組みを作りたいと思っています。みんなが協力し合って、何か一つの活動をまわしていくような仕組みや雰囲気づくりをしていきたいです。」(松島さん)災害支援をきっかけにできた、食を通じたコミュニティーは、人と人がつながることで、様々な課題を解決する糸口にとなり、そこに住む地域住民がより暮らしやすくなる場になっています。
 
 

2023年度ver.
~昨年との活動の変化についてお伺いいたしました。~



 

◎主な事業内容
災害支援/防災教育
こども食堂/フードパントリー
中間支援・・・課題を抱える市民と、行政・企業・NPOなどをマッチング
◎活用している資金源 
宇和島市子ども食堂運営事業等補助金
支援対象児童等見守り強化事業
We Support
厚生労働省ひとり親家庭等子どもの食事等支援事業(令和4年度)
◎活動拠点
愛媛県宇和島市桝形町2丁目1番8号
◎URL
U.grandma Japanホームページ