特別寄稿
南豪州の食事サービス活動調査へ
東京学芸大学教育学部社会学研究室助手
清水 洋行

 
しみずひろゆき・千葉県生まれ。千葉市在住。
地域社会学を専攻し、都市社会を構成する団体に焦点をあてた実証的研究にとりくんでいる。
特に、コミュニティづくりの担い手として住民組織に関心をもち、近年は、高齢者向け食事サービス
団体について研究を行う。東京学芸大学教育学部社会学研究室助手。
 全国老人給食協力会運営員。

 全国老人給食協力会に関わることになったきっかけは、5年ほど前に、平野眞佐子さんが代表を
されている老人給食協力会ふきのとうを訪ねたことです。地域社会学という視点から<コミュニティづくり>、
<まちづくり>に関心をもって、「<コミュニティ>や<まち>を具体的に誰が担っていくのか」という点から、住民
組織を対象に調査研究を進めているところでした。  当初お話をうかがったとき、食事サービス活動は保
健・福祉・栄養といった分野の人の研究対象かな、という印象をもちました。しかし、おつきあいを重ねてい
くなかで、食事サービス活動には、高齢者の生活を支える在宅福祉サービスとしての役割とともに、そこに
とどまらない重要な役割があることを学びました。  それはまさに、私がこれまで勉強してきた<コミュニティ>
に関わる役割でした。地域での<コミュニティづくり>は1960年代末に提起され、さまざまな活動や施策が展
開されてきました。今日の食事サービス活動は、それらとは異なる新しいかたちで、地域のコミュニティをつ
くっていく運動の一つだと考えています。  
  ここ数年、ふきのとうのスタッフの方々と一緒に、いくつかの食事サービス活動団体にお願いをして、活動や
組織運営の実態と課題をつかむためのアンケート調査をしてきました。報告書にも書かせていただきましたが、
そこで見えてきたことは、この食事サービス活動は、子育てに一息つけるようになった40歳くらいの“若い”主婦
たちによる高齢者向けの活動であったものが、活動が継続するとともに、担い手も年齢を重ね高齢者どうしの相
互扶助になりつつあるということです。しかし一方で、活動現場は、やっと確保した狭くて暑い厨房で、やっと組ん
だローテーションに従って、週に何度も来ざるをえないボランティアによって、日々のサービスが提供されている
状態ということもわかりました。加えて、食事サービスの役割が認められるようになってきた結果、行政や福祉施
設、病院などからサービスの依頼が来るようになり、ますます多くの食数や、活動の頻度の増大、食事内容や利
用期間などに関わる多様な対応を求められるようになっていることも知りました。つまり活動の内も外も高齢のボ
ランティアに優しいとはいえない状態です。  
   このような日本の現状をふまえて、1999年に南オーストラリア州の食事サービス活動団体であるミールズ・オ
ン・ホィールズ南オーストラリア協会(Meals on Wheels South Australia Inc.)の訪問調査を行いました。  これもふ
きのとうのスタッフの方と一緒に実施したもので報告書になっています。当協会は、ご存じのように、1985年以来
ふきのとうと交流をもちモデルとなってきた団体です。  当協会は1953年に設立されたもので、時代とともに退職
者がボランティアの重要な構成員となってきており、厨房のなかや配達用自動車の運転席・助手席には70歳を越
えた主婦や退職した女性・男性の姿をごく普通に見ることができます。  
    活動の歴史とともに、このような高齢者の参加を可能とする条件も整えられてきました。  @広い厨房、安全で
使いやすい調理機器、対人・対物の保険といった活動環境の整備  A150人に1人の住民によるボランティア参
加や、利用者の寄付・遺贈などによる活動への幅広い支援  B現場と本部組織との分業と、本部組織による行政
や議員、マス・メディア等への積極的な働きかけなどです。  日本では、食事サービス活動を創ってきたボランティ
アの方々が高齢化しているとともに、戦後のベビー・ブームに生まれた方たちが50歳代にさしかかり、遠からぬ将
来、大量の退職者が生まれてきます。同時に、新たに“若い”専業主婦になる人たちは減っています。これらのこと
から、現在、南オーストラリアの経験に学ぶことはとても意義のあることだと考えています。  幸運なことにタイミン
グよく、文部科学省の在外研究員として10ヶ月間、海外に滞在する機会を得ることが出来ました。そこで今年の9月
から来年の6月まで、アデレード市郊外のフリンダース大学(Flinders University)に在籍し、短期の調査では知ること
ができなかった部分について勉強してきたいと考えています。特に、50年近くに及ぶ長い歴史のなかで、多くの市民
、行政、企業などの支持を獲得して発展してきた歴史的経緯や、たくさんの人がボランティアとして参加している社会
的背景、学校教育との連携、などについて調べる予定です。 
    このようなわけで、今後数回、アデレードでの滞在記を『べんけい草』に寄稿させていただくことになりました。
    調査研究のお話になるか、名産のワインのお話になるかわかりませんが、どうぞよろしくお願いいたします。